eスポーツはオリンピック競技として実現するのか?eスポーツの特性とともに解説

「eスポーツはオリンピックで行われるのか」

近年、eスポーツは急速に発展し、プロゲーマーという職業も世間から認められてきています。そんな中、eスポーツをオリンピックに取り入れようという動きが出てきました。オリンピックは古くから続く伝統的なものです。そこに近代の文化であるeスポーツは参入できるのでしょうか?

この記事では

  • eスポーツはオリンピックに採用されるのか
  • eスポーツ業界の動向

を解説しています。

 

オリンピック種目としての採用は難しい

結論から言いますと、eスポーツのオリンピック種目としての採用は難しいようです。その理由を解説します。

オリンピック憲章の原則

IOC(国際オリンピック委員会)はオリンピックを行う根本原則としてオリンピック憲章を出しています。そこには以下のような記述があります。

 

「オリンピズムは肉体と意志と精神のすべての資質を高め、 バランスよく結合させる生き方の哲学である。」

オリンピック憲章 2020年版』10pより引用 

 

ここにある「肉体と意思と精神のすべての資質を高め」という部分を、eスポーツは満たさないのではないかという考え方があります。

戦略を立てて相手と戦うという部分で、意思や精神を高めるということはあるでしょう。しかし、実際に体を動かすわけではないので、肉体の資質を高めるという部分には疑問が残ります

国際eスポーツ連盟はオリンピック承認団体ではない

eスポーツの国際大会の主催や世界共通の競技規則を定めているIeSF(国際eスポーツ連盟)はIOCに認められた団体ではありません。2024年に開催予定のパリオリンピックでは、エキシビションとしてeスポーツの試合が行われると予想されていますが、IOCの中で反対の声もあがっているようです。

また、スイスで開かれた五輪サミットで、IOCはeスポーツを競技として採用できないという見解を出しています。IOC会長のトーマス・バッハは、「暴力性のあるタイトルの存在」等4つの要因を取り上げて、eスポーツの採用に否定的な意見を示しました。

「競技決定は7年前」という原則

オリンピックに行う競技を選定するのは7年前までという規則があります。この規則はeスポーツの特性とかなり相性が悪いです。

オンラインゲームは次々と新しいものが発売され、古いタイトルのプレイ人口はすぐに減少します。eスポーツとして競技が行われているタイトルも例外ではありません。この状況下で、オリンピックで行うタイトルを7年前に決めてしまうと、大会開催時にはプレイ人口が少なくなっている、ということが起こりかねません。

また、オンラインゲームは一般的なスポーツと違い、ルール変更が頻繁に行われます。そのため、オリンピック競技として採用を決定した時と、開催する時ではルールが大きく違っているということもありえます。

ゲームの著作権料

オリンピックでeスポーツを行う際には、ゲームの製作企業に著作権料を支払う必要があります。この著作権料はかなり大きなものになるため、eスポーツのオリンピック競技としての採用を困難にしています。

IOCの内部では、この著作権料の問題を解決するためにオリンピックオリジナルのゲームを製作しようという試みがあります。しかし、オリンピックを運営する組織の中で、有名タイトルに並ぶようなゲームを作ることができるのか、という課題があります。

 

 

eスポーツ業界の動向

 

ここまではeスポーツはオリンピックに採用されることは難しい、ということを説明してきました。しかし、eスポーツ業界では現在までに多くの国際大会が開催されており、市場規模も伸びています

世界のeスポーツの市場規模は右肩あがりになっており、2018年には約1000億円を超えています。これは2014年と比べると3倍以上の数値です。さらに、これからも市場規模は上昇することが推測されています。

アジアでの動向

アジアではeスポーツに対する取り組みが多く見られます

2018年にインドネシアで開催されたアジア競技大会では、6種類のゲームが参考競技として開催されました。

2022年には中国の杭州でアジア競技大会の開催が予定されています。杭州はこの大会を契機として、eスポーツを都市産業とすることを目標としています。そのために、杭州はeスポーツ専用のスタジアムを建設する等の努力をしているようです。

アジア各国のeスポーツ発展への貢献は期待できるでしょう

日本の動向

日本ではJeSU(日本eスポーツ連合)がeスポーツのプロライセンスを発行するなど、eスポーツの発展に貢献しています。JeSUは地方にも多くの支部を持っており、全国的に規模を拡大しています

JeSUは多くの国内大会を運営しており、ぷよぷよ・ウィニングイレブン・グランツーリスモなどの大会を行っています。

また、JeSUはJOC(日本オリンピック委員会)の認可団体とされています。日本のeスポーツ発展に貢献することでしょう。

現在、日本はeスポーツ後進国と言われることもありますが、今後の活躍には期待できそうです

 

 

まとめ

  • eスポーツのオリンピック参入は難しい
  • eスポーツの市場自体は伸びている

オリンピックでeスポーツを見ることは難しいですが、eスポーツ業界全体は成長しています。最近では、大会のYoutube配信を行っているゲームタイトルも多いです。eスポーツの観戦は容易になっているので、より多くの人の目に触れることでしょう。

今後のeスポーツ業界の動向には注目です。