日本では、プロゲーマーとして公認されるライセンスを日本eスポーツ連合(JeSU)が発行しています。プロゲーマーライセンスはこれまでに多くの選手やチームに発行され、ゲームのプロである称号として広く知られるようになりました。
しかし、「ライセンスの存在は知っているけれど、どうやって取れるのかわからない」という人も多いでしょう。そんな方のために、この記事ではプロゲーマーライセンスの取り方について解説しています。
これまでにライセンスを取得した人の事例やライセンス無しでプロゲーマーになる方法についても紹介しているので「将来プロゲーマーになりたい!」と思っている方はぜひご覧ください。
プロゲーマーライセンスの取り方
プロゲーマーライセンスを発行する対象はJeSUの公式Webサイトに示されています。
JeSUの定める基準
JeSU公認プロライセンスとは、JeSUが別途公認する大会において当該大会規約に基づき好成績を収め、競技性、興行性ある大会等へ出場するゲームプレイヤーとしてプロフェッショナルであるという自覚を持ち、スポーツマンシップに則り、国内eスポーツの発展に寄与し、ゲームプレイの技術の向上に日々精進することを誓約する者で、ライセンス取得に相応しいと判断された者に対して、本規約2における種別に応じて発行されるものをいう。
プロライセンスはJeSUが公認した大会で優秀な成績を残した人に対して発行されるみたいです。JeSUが公認している大会以外では基本的に発行されていないので、プロライセンス取得を目指す際は、自分がプレイしているゲームで公認大会が行われているか確認しておきましょう。
また、ゲームタイトルや大会の規模によって「好成績」の基準が異なるので、こちらも事前に確認しておく必要があります。
JeSU公認大会以外でも発行される条件
JeSUが公認している大会以外でも例外的にプロライセンスが発行される条件があります。
IP ホルダーは過去実績も含めて、JeSU 公認の大会以外の国内外の大会で著しく優秀な実績を残した選手のうち、JeSU 公認ライセンス取得にふさわしい選手を特別枠として推薦することができる。その中からJeSU が対象に十分な実績があり妥当と認めた特定の選手は例外としてJeSU公認プロライセンスの取得資格を有するものとする。
JeSU公認プロライセンス規約7.2.1より引用
※ここでのIPホルダーとは、JeSUが公認しているゲームタイトルの知的財産を管理・保有する企業等のこと。CAPCOM、SEGA、Konami Digital Entertainmentなど。
JeSUが公認している大会でなくても、国内外の大会で成績を残せばプロライセンスが認められる場合があるそうです。しかし、「著しく優秀な実績」とあるので、他とは比べ物にならないくらいの圧倒的な成績でなければライセンス取得には至らない、と考えられます。
これまでに発行されたプロゲーマーライセンスを紹介
これまでに、JeSUのプロゲーマーライセンスは230名のプレイヤーと13のチームに与えられました。ここでは、プロライセンスが発行された経緯について一部を取り上げて紹介していきます。
ストリートファイターV チャンピオンエディション
ストリートファイターV チャンピオンエディションで最初のプロライセンスは「CAPCOM Pro Tour 2017」のランキング100位以内に入っていた日本人選手21人に与えられました。ウメハラ選手、ときど選手、板橋ザンギエフ選手など有名プレイヤーがプロライセンスを獲得しています。
また、2021年の6~8月には、優勝者・準優勝者にプロライセンスの発行権が与えられる「SFL: Pro-JP 2021 トライアウト大会」が開催されました。
鉄拳7
鉄拳7では「闘会議2018 鉄拳7 ~Break the world~」の上位4名に最初のプロライセンスが与えられました。
また、世界規模の大会「Evolution」などで実績を残したプレイヤー4名にもプロライセンスが付与されています。
レインボーシックスシージ
レインボーシックスシージでは、PC版の大会「JCG R6S PC Monthly Ops」や「UBIDAY 2017」の優勝チームに所属していたメンバーに最初のプロライセンスが付与されました。プロライセンスを付与されたのは父の背中、eiNs、SengokuGaming、野良連合の4チームのメンバーです。
ウイニングイレブン
ウイニングイレブンでは、「ウイニングイレブン 2018 CO-OPライセンスマッチ@ニコニコ超会議2018」の上位2チームのメンバーに対してプロライセンスが付与されました。
ぷよぷよシリーズ
ぷよぷよシリーズで最初のプロライセンスはSEGAの推薦によって11人が選出されました。これまでに大会で実績を残したプレイヤーをSEGAが推薦し、JeSUの審査によってプロライセンスが与えられています。
テトリスの神と呼ばれるあめみやたいよう選手などが選ばれました。
DEAD OR ALIVE6
DEAD OR ALIVE6では、「東京ゲームショウ2019」にて行われた「DEAD OR ALIVE 6 World Championship “Fatal Match in Japan”」の上位4名にプロライセンスが与えられました。
パズル&ドラゴンズ
最初のプロライセンスは「第5回パズドラジャパンカップ」優勝者のLUKA選手と「第4回パズドラジャパンカップ」優勝者のゆわ選手に与えられています。
また、「パズドラチャレンジカップ闘会議2018」の上位3名にもプロライセンスの発行権が与えられました。
モンスターストライク
モンスターストライクでは、「闘会議CUP2018」のAブロックを勝ち抜いた今池壁ドンズαとBブロックを勝ち抜いた【愛】獣神亭一門のメンバーに最初のプロライセンスが付与されました。
遅れているJeSUの対応
プロゲーマーライセンスの取得にはJeSU公認の大会に出場する必要がありますが、あまりJeSU公認の大会が開催されていない印象があります。実際、JeSU公式Webサイトを見ても、大会の告知は少ないです。
デジタルライターの岡安学氏が過去に行ったJeSUへのインタビューでは「やりたいこと、やらなければいけなことは山積しているが、手が間に合っていない」との話がありました。
また、国内で多くの人にeスポーツとしてプレイされているゲームタイトルでも、JeSUに認定されていないものが多くあります。このようなタイトルの認定にも時間がかかっているようです。
(出典:岡安学 著『みんなが知りたかった 最新eスポーツの教科書』 株式会社秀和システム)
ライセンスを取得せずにプロゲーマーとして生活する方法
JeSUの発行するプロライセンスを取得しなくてもプロゲーマーとして生活することは可能です。その方法について説明していきます。
個人でスポンサーを獲得する
ゲームの関連会社やエナジードリンクの会社などに直接スポンサーについてもらうのも1つの方法です。
日本人で最初にプロゲーマーになったウメハラ選手は、2010年にアメリカのゲーム周辺機器メーカーマッドキャッツからスポンサードを受けることでプロゲーマーとして生計を立て始めました。
東大卒プロゲーマーのときど選手も、最初は自分からメールを送って色々な企業にスポンサーの依頼をしていたそうです。
もちろん誰でもスポンサードを受けることができるわけではありませんが、プロゲーマーとして生計を立てるなら選択肢のひとつとして考えておくべきでしょう。
給料制のプロゲーマーチームに加入する
スポンサードを受ける方法以外にも、給料制を導入しているプロゲーマーチームに加入するという方法があります。プロゲーマーチームDetonatioN Gamingでは、2015年に給料制が導入されたことによって給料をもらいながらゲームをプレイできる環境ができました。
給料制のチームに所属していれば、大会で賞金を獲得できなかったとしても給料でお金をもらえます。長期的に収入が入ってくるので、突然一文無しになってしまうということがありません。
まとめ
- JeSUのプロライセンスはJeSU公認の大会で好成績を残したプレイヤーに与えられる
- JeSU公認の大会でなくても、国内外で優秀な成績を収めたプレイヤーには例外的にプロライセンスが与えられることがある。
- JeSUのライセンスが無くても「スポンサーと契約する」「給料制のプロチームに加入する」ことでプロゲーマーとして生計を立てることが可能
いかがでしたでしょうか。JeSUのライセンス獲得には公認の大会に参加する必要があります。しかし、JeSUの対応は遅れており、公認大会はあまり行われていません。JeSU公認ライセンスの取得は困難になっているのが現状です。
また、JeSU公認ライセンスを取得しなくてもプロゲーマーとして生活できる方法についても解説しました。特に、給料制のプロチームが生まれたことはプロゲーマーを目指す人にとってありがたいことですね。
eスポーツが活発になってほしい筆者としては、今後プロゲーマーという職業がもっとメジャーになって、目指す人が安心できるようになったらいいなと思うところです。